借地借家法とは?
借地借家法とは、建物の所有を目的とする地上権・土地の賃貸借と建物の賃貸借について定めた法律です。
従来は、借地法・借家法と別れていたのですが、平成4年に建物の保護に関する法律も加えて、大幅に改正され「借地借家法」の一本に統合されました。
一般的に改正前の法律を「旧法」と呼び、改正後の法律を「新法」と呼びます。
借地法借家法の経緯
借地法が制定されたのが、大正10年。立法前の地主と借地人の力関係は、地主が圧倒的優位な立場で借地人は弱い立場にありました。
弱い立場である借地人の保護を図る目的で立法されたのが、現在の借地借家法の前身となる借地法です。
旧法の借地制度の問題点
1.一度土地を貸すと半永久的に戻ってこない
借地契約が満了しても、地主が土地を返してもらうには「正当事由」が必要とされ、一度土地を返すと半永久的にもどってこないという大変な問題がおきてしまった。
正当事由・・
地主が自ら土地を使用する必要があり、なおかつ借地人と地主の両者の利害得失を比較考慮して、地主に相当の事情があると認められる場合のこと(平成4年の改正後、明確化された)
2.借地人の権利が強い
正当事由制度により、借地権が事実上、半永久的に継続する強い権利になりました。
また、地価の継続的な上昇によって生じる土地の値上がり益の多くが借地人のものになり、
借地人の土地に対する権利割合が高くなりました。
借地権価格は住宅地では土地価格の6割から7割、商業地域は都心だと9割に達するケースもみられます。
地主にしてみれば、自分の土地を貸したのに、いつの間にか借地人のほうが大きな権利を持っている上に、土地は返してもらえないという、なんとも理不尽な状況です。
平成4年にどこが改正されたの?
平成4年の改正で変わった点は、主に次の三点です。
1.建物の構造によって違っていた借地期間が一律化されたこと
旧法では、堅古建物(コンクリート造など)なのか、非堅古建物(木造など)なのかによって契約期間が異なっていました。改正後は建物の構造による区別がなくなりました。
2.地主が借地人に立ち退きを求めることができる理由(正当事由)が明確化されたこと
旧法では、正当事由の規定が「地主自らと地の使用を必要とする事情、その他正当事由」としか規定されていませんでした。
改正後はこれに加え、
・ 借地に関するそれまでの経過
・ 土地利用の状況
・ 契約解消にあたって地主が財産の給付をするかどうか(立ち退き料があるかどうか)
が明記されました。
3.定期借地権
一度土地を貸したら半永久的に返ってこないという旧法の普通借地権の問題点の反省から、一定の期間だけ土地を貸して更新をしない、貸した土地が必ず戻ってくるという定期借地権が生まれました。
定期借地制権には「一般定期借地権」「事業用定期借地権」「建物譲渡特約つき定期借地権」の3種類があります。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
借地期間 | 建物買取請求 | 契約方式 | |
一般定期借地権 | 50年以上 | できない | 書面で行う |
事業用定期借地権 | 10年以上、20年以下 | できない | 必ず公正証書で行う |
建物譲渡特約つき定期借地権 | 30年以上 | できる | 制限なし |
平成4年の改正前に締結された契約には、今でも旧法が適用される
旧法の普通借地権では、正当事由がないと半永久的に土地が返ってこないのに対し、改正後の新法で生まれた定期借地制度では、決まった期間だけ土地を貸し、契約終了後は土地を返してもらえます。ここが旧法と新法の大きな違いです。
しかし、平成4年の改正前に既に締結されている契約には、新法の規定が適用されず、現在でも旧法が適用されます。
既存の契約が更新される場合も、依然として旧法が適用されることになります。
よって、改正前に借地契約を結んだ地主にとっては、改正は大きな意味をなさず、今でも旧法の「土地を返してもらえない」という問題に悩んでいるのが実情です。