A:貸地の明渡しを要求
- こんな地主さんにおすすめ
- 地代を滞納されている
- 勝手に建て替えをされてしまった!
借地人に契約上の違反行為がある場合、地主は賃貸借契約を解除することができます。
契約を解除して明け渡してもらう事ができれば、完全な所有権になるので、土地の資産価値があがり、有効活用が望めます。
ただし、実際に借地人の違反行為が発覚しても、「違反しているから出て行ってね」「はい、わかりました」というわけには普通はいかないので、この場合は明け渡し訴訟で争うことになります。
借地の明け渡しができる場合
次のようなケースの場合、地主は賃貸借契約を解除することができます。
これらの全てのケースにおいて、明け渡しの裁判では「借地人の違反行為が、地主と借地人の間の信頼関係を破壊したといえるかどうか」という点が判断基準となります。民法に明文化されてはいませんが、判例上認められています。
1.借地人が地代を滞納したとき
滞納回数だけでなく、滞納の額、両者の態度、借地人の生活状況など諸事情から総合的に判断されます。
一般的に6ヶ月~1年分の滞納があった場合は、よほど特殊な事情がない限り、明け渡してもらえると考えてよいでしょう。
しかし、1ヶ月・2ヶ月程度と滞納期間が短い場合は、これくらいでは借地人と地主の信頼関係が破壊されたとはいえないので、明け渡してもらえる可能性は低いです。
2.借地人が借地権を地主の承諾なしに譲渡・転貸したとき
借地人が借地権を第三者に譲渡・転貸する場合には、必ず地主の承諾を得なければなりません。無断譲渡・無断転貸があった際には地主は契約を解除できます。(民法612条)
ただし、無断譲渡・転貸といえる場合でも、地主に特に不利益がない為、信頼関係を破壊する行為とされず、契約解除が認められなかったという例外的ケースもあります。
(判例)
- 借地人が借地上の建物で同居生活をしていた妻との離婚に伴い妻に借地権を譲渡した場合(最高裁 昭和44.4.24)
- 借地人が所有建物を子供との共有にしたのに伴って、借地権の持分譲渡が生じた場合(最高裁 昭和39.1.16)
3.借地上の建物の無断増改築がある場合
無断増改築禁止の特約がない場合は、その増改築が地主にとって、よほどマイナスにならなければ、増改築は原則として自由です。
ただし、増改築禁止の特約があった場合には、契約違反として契約解除の原因になります。ただ、裁判所は軽微な違反についてまでは契約解除を認めないようです。
無断増改築禁止の特約を結んでいても、違反したときに必ず明け渡してもらえるわけではありません。
4.借地の用法違反がある場合
借地人は契約で定められた用法にしたがって、借地を使用する義務があります。
(民法616条、同法594条1項)
したがって、借地人に用法違反があれば、これを理由に地主は契約を解除できます。
(用法違反の例)
- 木造などの非堅固建物を所有する目的で契約したのに、コンクリート造などの堅固建物を建築した場合
- 借地人が借地に隣接する地主の所有地に越境建築した場合
5.借地の保管義務違反がある場合
借地人は借地を返還するまで、注意を払って借地を保管する義務があります。(民法400条)
したがって、借地人が保管義務に違反した場合、契約を解除できます。
保管義務違反の例)
土地を掘り下げるなどして、土地の形状を著しく変更した場合
裁判で明け渡しが決まったあとの借地人への補償は?
合意で借地を明け渡してもらう際には、一般的に地主は借地人に立ち退き料を支払ったり、場合によっては建物を買い取ったりします。
しかし、借地人の違反行為で契約解除にいたった場合、借地権は無償で変換されますし、
もちろん立ち退き料を支払う必要もありません。
建物買取請求権があるかどうかについても、多くの判例はないとしています。
(最高裁判所 昭和35.2.9)